販売価格の決め方は事業戦略としてとても重要です。正しい方法で設定しないと売れ行きに悪影響が出ることもあり、利益を得られないこともあります。
価格設定の考え方
最適な価格設定
同じ商品価格であっても、人によって高いと感じる人もいれば、安いと感じる人がいます。
企業が新商品の価格を決める際に価格を高く設定しすぎると、その商品は売れなくなってしまいます。逆に、低価格に設定しすぎると、消費者に品質の悪い商品ではないかと思われてしまい、かえって購入されない可能性があります。
このため、企業などでは消費者の商品に対する価格意識を調査することで、最も支持されやすい価格、どの範囲の価格帯が消費者に受け入れられるかを把握することが大切になっています。
このとき、商品価格を決める際に用いられるのが、PSM(Price Sensitivity Measurement)分析(価格感度測定法)という手法です。PSM分析は、消費者に対して新商品を提示して、どれくらいの価格であれば購入するかを聞き取り、消費者に受け入れられる価格などを明らかにするための調査・分析の手法 (※1) です。
1,500円 | 2,000円 | 2,500円 | 3,000円 | 3,500円 | 4,000円 | 4,500円 | 5,000円 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
高いと感じる価格 | 0 | 0 | 10 | 22 | 50 | 75 | 93 | 100 |
安いと感じる価格 | 100 | 85 | 60 | 34 | 18 | 4 | 0 | 0 |
高すぎて買わない価格 | 0 | 0 | 0 | 10 | 18 | 32 | 78 | 100 |
安すぎて買わない価格 | 100 | 70 | 30 | 7 | 2 | 0 | 0 | 0 |
交点等 | 意味 |
---|---|
最適価格 | 最も価格拒否感がないとみられる価格 |
妥協価格 | 高いと安いに評価が分かれる価格 |
上限価格 | これ以上高くなると、消費者に購入されなくなるとみられる価格 |
下限価格 | これ以上安くなると、消費者が「品質が悪いのではないかと不安になる」と感じる価格 |
受容価格帯 | 上限価格と下限価格の間 |
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販売価格の決め方を解説。商品の価値に合う正しい価格設定とは
販売価格の決め方は事業戦略としてとても重要です。正しい方法で設定しないと売れ行きに悪影響が出ることもあり、利益を得られないこともあります。
販売価格の基本
価格設定の考え方
販売価格の決め方を知るためには、販売価格に関する用語と価格設定の基本的な考え方を理解しておくことが大切です。
商品の価格が決まる過程を理解するために、必要な基礎知識として押さえておきましょう。
販売価格の関連用語
原価・原価率
原価・原価率とは、 商品やサービスを提供するためにかかった費用とその比率 です。基本的には、販売価格が原価よりも低いと利益は出ません。
また、反対に販売価格が原価を大きく上回れば利益は大きくなります。非常に単純なことですが、販売価格を決める際にこの仕組みはとても重要です。
利益率は、 販売価格に対して利益の占める割合 です。売上に対して何パーセントの利益が残るかがわかります。 価格設定の考え方
利益率は販売価格と原価から計算できますが、それをもとに販売価格を決定する際に原価と利益率を使う方法もあります。
販売価格を決める3つの考え方
原価を商品価格の何割にするか決める
原価をベースにする考え方で、商品の販売価格の何割を原価にするか、つまり原価率を使う方法です。
原価をもとに販売価格を決めるため、 計算が単純で誰でも価格設定がしやすい方法 だといえます。
どれくらい利益がほしいか決める
販売価格を決める際には、利益をベースに考えることもできます。この場合には、利益率をもとに販売価格を決めていきます。
上記で述べた計算式を利用することで、 比較的簡単に価格設定が可能 です。
競合や市場と比較する
競合や市場と比較することも販売価格を決める際には重要です。この考え方を取り入れることで、上記2つの考え方では不足している部分を埋められるでしょう。
自社商品と同じジャンルの市場を見て、競合の商品や販売価格と比較すれば、 いくらなら売れるか予測しやすく、価格相場も反映 できます。
販売価格の決め方-基本的な方法5つ-
販売価格の決め方にはいくつもの方法があります。販売価格は、上記の考え方も抑えながら、実際にはマーケティング戦略を踏まえて決定していきます。
コストプラス法
コストを上回る適正価格を出しやすく、 シンプルに価格を決められる反面、顧客の希望や競合、市場の状況は反映されません 。
そのため、コストプラス法を使う際には、商品に付加価値を付け、それを顧客に伝えて価格に納得してもらうことが大切です。
マークアップ法
マークアップ法とは、卸売業者や小売店が行う販売価格の決定方法です。製造コストをもとにするコストプラス法の変種であり、製造原価ではなく仕入れ原価をもとにします。
基本的には コストプラス法と同じ仕組みの計算方法 であり、業種によって使い分けます。
市場価格追随法
市場価格追随法は、 市場に出回っている競合の商品を基準に価格を決める方法 です。
すでに市場に出ている競合の商品と差別化できる場合には、競合以上の価格を設定し、売上を増やせます。
ただし、競合との差別化ができない商品は価格を下げて設定しなければならず、売れ残るリスクも出てきます。
プライスリーダー追随法
市場価格追随法と同じく、同業者の価格を基準にする方法ですが、プライスリーダー追随法では 業界に大きな影響力を持つリーダー企業の販売価格を基準 とします。
市場で高いシェアを持ち、価格への影響力が高い企業に追随して価格を決める方法です。
市場でシェアを持つリーダー企業は顧客の信頼も厚く、その企業の価格より高い金額を付けても売れません。
また、リーダー企業より安い価格にすれば販売数は稼げますが、その場合にはコストも抑えなければ利益が減ります。
そのため、リーダー企業の力が大きいジャンルでは、よほど差別化された商品でない限り価格設定も追随するしかありません。
慣習価格法
慣習価格法とは、 長期にわたって慣習的に決められてきた価格に従って設定する方法 価格設定の考え方 です。伝統的な価格帯のあるジャンルの商品を販売する場合に用いられます。
販売価格の決め方-消費者心理に基づいた方法4つ-
販売価格の決め方には、消費者心理に基づいて柔軟に設定する方法もあります。
商品の独自性や価格相場も大切ですが、それ以外で賢く利益を上げる戦略も取り入れてください。
名声価格法
名声価格法とは、 品質の違いや付加価値の違いを打ち出し、その違いや特徴をプレミア化してあえて高い販売価格を付ける方法 です。
ぜいたく品や希少価値の高い商品などで、この販売価格の決め方は功を奏します。
消費者は価格が安いものばかり購入するのではなく、価格が高く品質も高いと感じる商品にも魅力を感じやすいものです。
商品ジャンルによっては、普通の価格の商品以上に高い価格の商品をほしいと感じることもあります。
ブランド品や宝石などに効果的ですが、ラインナップの中に特別なシリーズやプレミアムブランドを作ることでも実現できる方法です。
端数価格とは、1,000円、2,000円のようにキリの良い価格ではなく、 980円、1,980円のようにほんの少しだけ値下げして端数を作る方法 です。
1,000円と980円ではほんの20円の違いですが、980円のほうがお買い得に見えるため、多くの店でこうした価格設定を行っています。
商品の品質や独自性に関係なく、消費者心理に基づき売上を伸ばすためのちょっとした工夫です。
段階価格とは、 複数のラインナップで活用できる販売価格の決め方 です。
この方法を用いることで、一番売りたい商品や一番利益率の良い商品をより効果的に販売できるでしょう。
段階価格は、人の心理である「極端の回避性」を使った戦略です。
人は「松竹梅」のような3段階に分かれた選択肢から選ぶ時に、上と下を避けて真ん中の商品を選びやすい心理を持っています。
そのため、ある商品を売りたい場合には、その価格より高い商品とその価格より安い商品を一緒に並べるのが効果的です。
抱き合わせ価格
抱き合わせ価格とは、 商品を組み合わせることで割引する販売価格の設定方法 です。メインの商品とサブの商品などを組み合わせます。
セット価格で販売することで、割引するため単価は下がりますが、客単価がアップするため売上も上がります。
販売価格の決め方の注意点
価格設定の考え方 価格設定の考え方
販売価格を決める際には、自社の利益や顧客・消費者のニーズなど、いくつもの観点から価格を検証することが必要です。
価格設定をしたら、以下の注意点を参考に適切な販売価格が設定できているか確認してみてください。
顧客目線で検討できているか
販売価格の決め方の重要なポイントは、 顧客や消費者が購入したいと思うかどうか です。
どれくらい良い商品やサービスだったとしても、それに見合った価格でなければ消費者は購入したいとは思わないでしょう。
販売価格を高くすれば販売した時の利益は増えますが、消費者が手に取らなければ、もとも子もありません。
市場価格とかけ離れていないか
販売価格を決める上では、市場価格との乖離(かいり)も気にしたいポイントです。
市場価格と自社の商品価格がかけ離れていた場合、 高すぎても安すぎても売上のチャンスを逃しやすく なります。
仕入れや時給以外にかかった費用は反映されているか
販売価格を決める際には、商品を販売するまでにかかった費用をすべて反映する必要があります。
特に、材料費や仕入れにかかった費用、時給などの人件費以外にかかった費用も含んで計算することが大切です。
営業費や広告宣伝費など、 目に見えにくい費用も含めて反映されているか 、最終チェックしてください。
一度決めた販売価格はなかなか変えられるものではなく、最初に安く設定してしまうとあとから値上げするのは大変です。
販売価格を決める際には、無理なく販売し続けられるか十分に検討 しましょう。
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